梅雨の季節を彩る美しい紫陽花。しかし、大切に育てているはずなのに「葉がしおれて元気がない」「なんだか育ちが悪い」と感じることはありませんか。その不調、もしかしたら紫陽花の根腐れが原因かもしれません。
水の管理が難しい紫陽花は、実は根腐れを起こしやすい植物の一つです。特に、紫陽花の鉢植えでの根腐れは多くの人が経験する悩みであり、人気品種である紫陽花「万華鏡」の根腐れのように、デリケートな品種ではより注意深い管理が求められます。
この記事では、根腐れの初期症状を画像付きで分かりやすく解説し、その原因を徹底的に探ります。
さらに、根っこの状態に応じた適切な対処法や、植え替えによる復活の具体的な手順、そして最終手段としての紫陽花の挿し木による根腐れからの再生方法まで、あらゆる対策を網羅しました。
諦めてしまう前に、正しい知識であなたの紫陽花を救いましょう。
この記事でわかること
- 紫陽花の根腐れの具体的な症状と原因
- 根腐れの進行度に応じた正しい対処法
- 植え替えや挿し木による復活方法
- 鉢植えや人気品種特有の注意点と今後の対策
紫陽花が根腐れ?見分ける症状と原因

- 葉や茎に現れる根腐れの症状
- 根腐れした状態を画像で比較
- 健康な根と腐った根っこの違い
- なぜ起こる?根腐れを招く主な原因
- 紫陽花の鉢植えでおこる根腐れ
葉や茎に現れる根腐れの症状
紫陽花の根腐れは、まず地上部にサインとして現れます。最も分かりやすい初期症状は、水やりをしているにもかかわらず、葉がしおれて元気がない状態です。
紫陽花は水を好む植物のため、土が乾燥すると葉がしおれる「水切れ」を起こします。しかし、水切れの場合は水を与えれば数時間で葉にハリが戻るのが一般的です。一方で、根腐れの場合は、土が十分に湿っているのに葉がしおれたままという矛盾した状態になります。これは、根が腐ってしまい、水分を正常に吸収できなくなっているために起こる現象なのです。

さらに症状が進行すると、以下のような変化が見られます。
- 葉が黄色や茶色に変色し、落葉する
- 新しい芽や葉の成長が止まる
- 花の付きが悪くなる、または花がすぐに枯れる
- 株元がぐらつき、不安定になる
- 土の表面にカビが生えたり、異臭がしたりする
これらの症状が複数見られる場合、根腐れがかなり進行している可能性が高いと考えられます。
根腐れした状態を画像で比較

根腐れの最も確実な判断方法は、実際に根の状態を直接確認することです。言葉で説明するよりも、健康な根と根腐れした根を画像で比較すると、その違いは一目瞭然でしょう。
ここでは、鉢から抜いた際の根の状態をイメージして解説します。
健康な根の状態
健康な紫陽花の根は、全体的に乳白色や薄いクリーム色をしており、根の先端までハリがあります。触ってみるとしっかりとした弾力があり、簡単にはちぎれません。新しい根は特に白く、生命力に満ちています。
根腐れした根の状態
根腐れを起こした根は、黒色や暗い茶色に変色しています。触るとブヨブヨと柔らかく、少し引っ張るだけで簡単にちぎれてしまいます。ひどい場合には、根が溶けてドロドロの状態になり、腐敗臭のようなツンとした異臭を放つこともあります。
根の健康診断を習慣に
鉢から株を抜いてみないと根の状態は確認できませんが、植え替えの際などにチェックする習慣をつけると、根腐れの早期発見につながります。
健康な根と腐った根っこの違い
前述の通り、健康な根と腐った根っこの状態は、見た目や感触で明確に見分けることが可能です。ここでは、その違いをより分かりやすく表にまとめて比較します。
このポイントを覚えておけば、植え替え時などに自分の紫陽花の健康状態を正確に診断できます。
項目 | 健康な根っこ | 根腐れした根っこ |
---|---|---|
色 | 乳白色、薄いクリーム色 | 黒色、暗い茶色 |
硬さ・感触 | ハリと弾力があり、しっかりしている | ブヨブヨと柔らかく、脆い |
状態 | 根の先端までしっかり伸びている | 途中でちぎれたり、溶けている |
匂い | ほぼ無臭、または土の匂い | 腐敗臭、酸っぱいような異臭 |

なぜ起こる?根腐れを招く主な原因

紫陽花が根腐れを起こす原因は、主に土の中の環境が悪化し、根が酸欠状態になることにあります。具体的には、以下の3つのケースが考えられます。
1. 水のやりすぎ(過湿)
最も多い原因が、水のやりすぎです。「紫陽花は水を好む」というイメージから、良かれと思って毎日水を与え続けると、土が常に湿った状態になります。土の粒子間にあるべき空気が水で満たされると、根は呼吸ができなくなり窒息してしまいます。これが根腐れの直接的な引き金となるのです。
2. 土の水はけが悪い
水やりの頻度が適切でも、使用している土自体の水はけが悪いと、鉢の中に水分が停滞しやすくなります。例えば、粘土質の土を多く使っていたり、長年植え替えをしておらず土が固く締まっていたりすると、水が抜けずに過湿状態を招きます。市販の培養土でも、安価なものや古いものは水はけが悪くなっていることがあるため注意が必要です。
3. 鉢が大きすぎる
株の大きさに対して不釣り合いなほど大きな鉢を使うことも、根腐れの原因になり得ます。鉢が大きいと土の量が多くなり、植物が吸い上げる水分量よりも土が保持する水分量の方が多くなります。その結果、土がなかなか乾かず、常にジメジメとした状態が続いてしまうのです。
土選びに迷ったら「専用土」が近道
初心者のうちは、水やりの加減や土の配合が難しいものです。まずは市販の「アジサイ専用の培養土」を使うと、水はけと水もちのバランスが良く、失敗を減らすことができます。
紫陽花の鉢植えでおこる根腐れ
地植えの紫陽花に比べて、紫陽花の鉢植えは根腐れのリスクが格段に高まります。これには、鉢植えならではのいくつかの理由が存在します。
第一に、根を伸ばせるスペースが限られていることです。鉢の中で根がいっぱいになると「根詰まり」という状態になります。根詰まりを起こした鉢は、水やりの際に水が土に浸透しにくくなったり、逆に一度吸った水が抜けにくくなったりして、根腐れを引き起こしやすくなるのです。
第二に、水受け皿の管理です。水やり後に受け皿に溜まった水をそのままにしておくと、鉢底が常に水に浸かった状態になります。これは、植物を水に溺れさせているのと同じで、根が呼吸できなくなり、根腐れの直接的な原因となります。
鉢植え管理の2大鉄則
鉢植えで紫陽花を育てる際は、以下の2点を徹底することが根腐れ防止の鍵となります。
- 2年に1回を目安に、一回り大きな鉢に植え替える
- 水やり後に受け皿に溜まった水は、その都度必ず捨てる
このように鉢植えは地植えに比べて丁寧な管理が求められます。室内での紫陽花の鉢植えの育て方の基本については、こちらの記事で網羅的に解説していますので、合わせてご覧ください。
紫陽花の根腐れからの正しい対処と再生法

- 緊急時に行うべき具体的な対処
- 復活をかけた正しい植え替え方法
- 弱った株を復活させるための管理術
- 人気品種、紫陽花万華鏡の根腐れ
- 根腐れした紫陽花を挿し木で再生
- 今後の対策で防ぐ紫陽花 根腐れ
緊急時に行うべき具体的な対処
「根腐れかもしれない」と感じたときに、すぐに行うべき応急対処があります。症状がまだ軽度であれば、この初期対応だけで回復することもあります。
まず、水やりの頻度を直ちに見直しましょう。土が湿っている場合は、表面が乾くまで水やりを完全にストップします。土の中の過剰な水分を少しでも減らし、根が呼吸できる環境を取り戻すことが最優先です。
次に、紫陽花を置く場所を移動させます。直射日光が当たる場所に置いている場合は、半日陰や明るい日陰に移動させてください。根が弱っている状態で強い日差しを浴びると、葉からの蒸散に根からの吸水が追いつかず、さらに株が弱ってしまいます。

この応急処置を行っている間は、追肥や活力剤を与えるのは絶対にやめてください。根が栄養を吸収できない状態で肥料を与えると、かえって根を傷める「肥料焼け」を起こし、症状を悪化させる可能性があります。
数日間様子を見て、葉のしおれが改善し、新しい芽が動く気配があれば、回復の兆しです。
復活をかけた正しい植え替え方法

応急処置をしても症状が改善しない場合や、明らかに根腐れが進行している場合は、植え替えを行うのが最も確実な復活への道です。少々手間はかかりますが、傷んだ環境をリセットすることで、紫陽花が再生する可能性がぐっと高まります。
本来、紫陽花の植え替え適期は休眠期の冬ですが、根腐れの場合は季節を問わず、気づいた時点ですぐに作業を行います。
手順1:株を鉢から優しく抜く
鉢の側面を軽く叩いて土をほぐし、株元を持ってゆっくりと引き抜きます。根が張って抜けない場合は、無理に引っ張らず、鉢と土の間にヘラなどを差し込んで剥がすようにします。
手順2:腐った根と古い土を取り除く
鉢から抜いた根鉢(根と土の塊)を確認します。黒や茶色に変色してブヨブヨになった根は、ためらわずに清潔なハサミで切り落としましょう。健康な白い根を傷つけないように注意しながら、腐った部分を完全に取り除きます。同時に、古い土も手で優しく揉むようにして、全体の3分の1から半分ほど落とします。
二次感染を防ぐ重要ポイント
このとき使用するハサミは、事前に熱湯消毒やアルコール消毒をしておきましょう。汚れたハサミを使うと、切り口から雑菌が入り、病気の原因になることがあります。
手順3:新しい土で植え付ける
元の鉢より一回り大きい、水はけの良い新しい鉢を用意します。鉢底に鉢底石を敷き、水はけと水もちのバランスが良い新しい培養土(アジサイ専用土がおすすめ)を使って植え付けます。腐った根を取り除いた分、株が小さくなっている場合は、同じサイズの鉢でも構いません。
手順4:植え付け後の管理
植え付け後は、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。その後は、前述の「弱った株を復活させるための管理術」に従って、慎重に養生させます。
弱った株を復活させるための管理術

植え替えという大手術を終えた紫陽花は、人間で言えば集中治療室にいるような状態です。ここからの丁寧な管理が、無事に復活できるかどうかを左右します。
最も重要なのは、水やりと置き場所です。
植え替え直後はたっぷりと水を与えますが、その後は土の表面がしっかりと乾いたのを確認してから水やりをします。常に湿らせておくのではなく、「乾いたら、与える」というメリハリをつけることが、新しい健康な根の発育を促します。
置き場所は、直射日光の当たらない、風通しの良い明るい日陰が最適です。最低でも2週間~1ヶ月は、この場所で静かに養生させましょう。地上部が元気を取り戻し、新しい葉が展開し始めたら、徐々に日当たりの良い場所へ慣らしていきます。
良かれと思って…が逆効果に
植え替え後の約1ヶ月間は、肥料や活力剤は一切与えないでください。弱った根には刺激が強すぎます。肥料を与えるのは、株が完全に回復し、安定した成長を見せ始めてからにしましょう。
焦らず、じっくりと紫陽花の回復力を見守ってあげることが、何よりも大切です。
株が完全に回復したら、次の花を咲かせるために適切な栄養管理が重要になります。紫陽花を元気に育てるための肥料の与え方や、年間の施肥スケジュールについては紫陽花の肥料と時期|年間の施肥計画と花を咲かせるコツを徹底解説で詳しく解説しています。
人気品種、紫陽花万華鏡の根腐れ
「紫陽花 万華鏡」は、その名の通り万華鏡のような繊細で美しい花色が魅力の人気品種です。しかし、その美しさの反面、栽培管理がややデリケートで、特に根腐れを起こしやすいという側面も持ち合わせています。
「万華鏡」は他の紫陽花に比べて水を好む性質が強く、水切れさせるとすぐに花や葉が傷んでしまいます。そのため、つい水を多めに与えてしまいがちですが、それが過湿を招き、根腐れにつながるケースが非常に多いのです。
購入時の鉢、そのまま使って大丈夫?
「万華鏡」を購入した場合、底面給水鉢に植えられていることがよくあります。このタイプの鉢は管理が楽な反面、常に水が供給されるため根が過湿になりやすいというデメリットもあります。水の減り具合をよく観察し、受け皿の水が常に満タンにならないよう調整が必要です。
また、「万華鏡」は強い直射日光を嫌います。開花中に日に当てると花がすぐに焼けて茶色くなってしまうため、室内や軒下などの明るい日陰で管理するのが基本です。日当たりが悪いと土が乾きにくくなるため、より一層、水のやりすぎには注意が必要となります。
「万華鏡」の根腐れを防ぐには、水はけの良い用土を使い、風通しの良い涼しい場所で、土の渇き具合を指で確認しながら水やりをする、という丁寧な管理が求められます。
根腐れした紫陽花を挿し木で再生

植え替えを試みても根の大部分が腐っており、株の復活が絶望的に見える…。そんな時でも、まだ諦めるのは早いかもしれません。地上部の茎に元気な部分が残っていれば、挿し木によって新しい株として再生させることが可能です。
これは、親株を救うというよりは、その遺伝子を受け継ぐクローンを作るという考え方です。
挿し木の手順
- 挿し穂の準備: まだ緑色でハリのある、病気のない茎を選び、先端から10~15cmほどの長さでカットします。
- 葉の処理: 葉からの水分の蒸散を抑えるため、付いている葉を2~3枚残し、その葉も半分ほどの大きさにハサミで切ります。
- 水揚げ: 切り口をカッターなどで斜めに切り直し、コップなどに入れた水に1~2時間ほど浸けて、十分に水を吸わせます。
- 挿し床に挿す: 清潔な挿し木用の土(赤玉土やバーミキュライトなど、肥料分のない土)をポットに入れ、湿らせておきます。棒で穴をあけ、そこに挿し穂を挿します。
- 管理: 明るい日陰に置き、土が乾かないように管理します。順調にいけば、約1ヶ月ほどで発根します。
根腐れで親株は助からなくても、挿し木で新しい命をつなぐことができます。より詳しい、紫陽花の挿し木を成功させる具体的な手順やコツについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

紫陽花の根腐れに関するQ&A
Q. 紫陽花の根腐れと「水切れ」の違いは何ですか?
A. 土の状態で見分けるのが最も簡単です。
土がカラカラに乾いている状態で葉がしおれているなら、それは「水切れ」です。この場合は、水やりをすれば数時間で回復します。
一方、土が十分に湿っている、またはジメジメしているのに葉がしおれている場合は「根腐れ」の可能性が非常に高いです。根が傷んで水分を吸い上げられないため、水やりをしても回復しません。
Q. 根腐れした株の植え替え後、肥料はいつから与えれば良いですか?
A. 最低でも1ヶ月は、一切の肥料や活力剤を与えないでください。
植え替え直後の根は大きなダメージを負っており、いわば人間でいう「大手術の後」と同じ状態です。そこに肥料を与えると、刺激が強すぎてかえって弱らせてしまいます。
新しい葉が元気に展開し始め、株が完全に回復したのを確認してから、薄めの液体肥料などから少しずつ与え始めるのが安全です。
Q. 根腐れした紫陽花はもう復活しませんか?
A. いいえ、諦める必要はありません。
根腐れは植物にとって危険な状態ですが、この記事でご紹介した正しい手順で植え替えを行ったり、元気な茎が残っていれば挿し木で新しい株として再生させたりと、復活できる可能性は十分にあります。
手遅れだと決めつけずに、まずはできる対処法を試してみることが大切です。
今後の対策で防ぐ紫陽花の根腐れ
紫陽花の根腐れについて詳しく解説しました。最後に、大切な紫陽花を二度と根腐れさせないための対策と、記事全体の要点をまとめます。
【症状と原因の見分け方】
- 根腐れのサインは葉のしおれや黄変、生育不良
- 土が湿っているのに元気がないのは危険信号
- 根腐れした根は黒く変色し異臭を放つ
- 主な原因は水のやりすぎと水はけの悪い土
【根腐れしてしまった時の対処法】
- 軽度の場合はまず水やりを止め日陰で養生する
- 症状が改善しない場合は思い切って植え替えるのが最善策
- 植え替え時は腐った根を清潔なハサミで完全に取り除く
- 用土は水はけの良い新しいものを使う
- 植え替え後はすぐに肥料を与えず回復を待つ
- 回復するまでは半日陰の涼しい場所で管理する
- 本体がダメでも元気な茎があれば挿し木で再生できる
【今後のための予防と管理】
- 水やりは土の表面が乾いたことを確認してからたっぷりと
- 水受け皿に溜まった水はその都度必ず捨てる
- 鉢植えは特に根詰まりと過湿に注意が必要
- 鉢植えは2年に1度を目安に植え替えを行い根の状態をチェックする
